検索欄に言葉を入れて結果を眺める時代から、問いを投げると要点と次の一手まで返る時代へ。最近は「自分では気づけなかったこと」をAIに求める声が増え、従来の検索体験に縛られないユーザー行動が目に見えて広がっています。今回はその点について、少しだけ整理してみます。
最近の動向について
- 2025年8月、AI検索の新興PerplexityがChromeの買収を提案しました。検索の大半が始まる“入口”の支配を巡る動きで、AI中心の体験へのシフトを象徴します(出典:Reuters, 2025/8/13)。
- 2025年2月、OpenAIはChatGPT Searchを一般提供。従来のリンク列挙ではなく、要点と根拠リンクをワンビューで提示する設計が広がりました(出典:OpenAI, 2025/2/5更新)。
- 2025年9月以降、GoogleはAI Mode/ChromeのAI強化などを継続。検索から学習・要約・作業までの橋渡しを一貫化する流れとなりました(出典:Google, 2025/10/8)。
- モバイルでもArc Searchが答え優先の体験をブラッシュアップし、アプリの更新で日常行動の最短距離を詰めています(出典:Google Play, 2025/10/8 更新)。
これらは共通して、リンク一覧よりもインサイトと実行を前に出し、情報を取得するコストを下げる方向に舵を切っています。明らかにこれまでの検索体験の流れとは違います。
何がどうなるの?
1)ユーザー体験
- 問い→答え→行動が一連の流れで完結(チケット購入・予約・メール作成など)。ページ遷移や広告スクロールを減らし、目的達成の時間を短縮していきます。
- 回答には出典リンクや証拠が伴うのが常識になるのではないでしょうか。納得感のある要約が標準品質となり、フェイク対策としても効果を示すようになります。
2)事業・メディア
- トラフィックの着地がプラットフォーム内に滞留しやすくなり、SEO一本足の集客は減速すると思われます。そのかわりに、一次データや独自ツールを持つサイトが評価されやすくなります。
- 収益は、これまでの広告一辺倒から、アフィリエイトや決済、手数料など成果寄りへ進む可能性があります。Perplexityや各社がエージェントによる決済連携を進めるのはこのためdあと思います。
3)組織・人材
- 検索体験の手法は、キーワード入力の上手さ(検索センスの差)から、問いの設計(つまりプロンプトの設計レベル)と検証スキルへ重心が移動します。また、プロンプトという堅苦しいことも、数年すれば必要がなくなり、質問し続けることで情報を取得できるようになるかと思います。社内ナレッジやデータ連携を重視するようにもなるでしょう。
- 法務・セキュリティ観点では、出典の透明性と個人情報の扱いがより厳格になるはずです。何でもかんでもAIに任せる実行範囲もポリシー化が必要になるでしょう。
探す作業”から“目的を達成する体験”へ移行
弊社でも、通常業務の初期段階でAI+提案活動により、打ち合わせの時間コストが目に見えて圧縮されています。ポイントは三つです。
- 問いの型を作る。 例:目的/制約/判断基準/ゴール条件をひとまとめに。AIは曖昧さに弱いので、型があるだけで再現性がぐっと跳ね上がります。
- 出典を確認するプロセスを埋め込む。 回答の信頼はリンクで裏取りできるかが大切です。ワークフロー上に検証のチェックポイントを置くと良いかと思います。
- 小さく実行して学ぶ。 予約・発注・メール送信などのエージェント実行は、影響範囲の小さいケースで。最初から完璧を追うのではなく、検証してブラッシュアップしながら精度を上げていくことが大切だと思います。
今後は、ブラウザと検索、エージェントが、一体のOSとして再定義されていくでしょうし、現在進行中です。ユーザーの目的達成をファーストに据えた設計競争から、冒頭に書いた企業買収などが始まっています。このような動きから、私たちはさらに情報収集欲が高まるようになって、例えば間違った買い物をしたり、間違った情報を信じ込んだりするようなことが減っていくと良いですね。









