プロでも素人でも経験があるのではないかと思い、今回は書いてみます。
苦労して作ったデザインをAIに見せたら、「とても魅力的なデザインです!」と褒められた。嬉しい反面、「本当にそうなのかな?」と不安になった経験はないでしょうか。
画像を読み取れるAIが身近になり、デザインを見せて感想を聞くことも珍しくなくなりました。ただ、AIの評価をそのまま信じてよいかというと、そう単純ではありません。今回は、AIがデザインの評価を苦手とする理由を、5つに分けて整理してみます。
理由1:デザインが使われる「現場」を知らない
デザインの良し悪しは、「誰に、何のために、どこで見せるのか」で大きく変わります。
たとえば、同じ赤いボタンでも、緊急性を伝えたい防災サイトなら正解で、落ち着きが求められる医療機関のサイトでは不正解かもしれません。
AIは、こちらから教えない限り、その背景を知りません。たとえるなら、初めて訪れた町で「この辺で一番おいしい店はどこ?」と聞かれた旅行者のようなものです。地元の好みも、お客さんの顔ぶれも知らないまま答えるので、どうしても無難な一般論になります。
理由2:「感じる」ことができない

デザインは、見た瞬間に「あ、いいな」「なんだか不安になる」と感じてもらえるかどうかが勝負です。この「感じる」部分は、人間の経験や感情と深く結びついています。
AIは、大量の画像と言葉の関係から学習していますが、実際にそのデザインを街角で目にして足を止めたり、心を動かされたりした経験はありません。
これは、レシピ本を読み込んだ人が、一度も料理を食べたことがないまま味を語るようなものです。理屈としては正しいことを言えても、「食べた人の表情」までは想像しきれません。
AIが不得意なこと(例)
・食べ物を実際に味わう ・匂いを嗅ぐ ・温度・痛み・硬さ・重さなどを触って感じる
・現場に行って目で確認する ・人の表情や空気感・「疲れた」「怖い」「おいしい」
・最新情報を正確に把握すること ・自社独自の事情を知らない中での判断 ・100%正しい回答
理由3:見せられたものを肯定しがち
AIは基本的に、相手の役に立とうとする設計になっています。その結果、見せられたものに対して肯定的な評価に寄りやすい傾向があるといわれています。
友人に「このデザインどう?」と聞かれたら、つい「いいと思うよ!」と言ってしまいますよね。それに近い働きが、AIにも起こり得ます。
本当は改善点があるのに、やわらかい言葉で包まれてしまうと、課題が見えなくなります。いわば、いつも「大丈夫、大丈夫」と言ってくれる優しい先輩に、厳しい指摘を期待するようなものです。
理由4:評価が安定しない
同じデザインを見せても、聞き方を変えたり、聞き直したりすると、評価が変わることがあります。人間でも気分によって評価が変わることはありますが、AIの場合は質問の言い回しや前の会話の流れにも影響されます。ものさしの目盛りが、測るたびに少しずつ動いているような状態です。
1回の評価で結論を出さず、複数回聞いたり、観点を変えて聞いたりして、共通して出てくる指摘を拾うのが安全です。
理由5:細部の「見え方」が人間と違う
AIが画像を読み取る仕組みは、人間の目とは異なります。細かい文字の判読、わずかな色の違い、数ピクセル単位のズレなどは、見落としたり、見間違えたりすることがあります。
また、実際の閲覧環境では、スマートフォンの小さな画面や、明るい屋外、古いモニターなど、条件が大きく変わります。AIが見ているのは、あくまで「きれいな状態の画像」です。
これは、スタジオで撮った写真だけを見て、「この服は、雨の日の通勤電車で着ても素敵です」と判断するようなものです。
苦手を知れば、頼りになる相棒になる

ここまで苦手な点を挙げてきましたが、AIが役に立たないという話ではありません。コントラスト、余白、整列、情報の強弱といった、基準に照らして確認できる部分は、AIが力を発揮しやすい領域です。つまり、文章や画像、データから判断して、推定・整理・表現することはできるのです。
大切なのは、次の3点を意識することです。
- 「誰向けで、何のためのデザインか」を最初に伝える
- 点数をつけてもらうより、「改善点を優先度順に3つ」のように具体的に聞く
- 最終判断は、自分や実際のお客さんの目で行う
AIは、道を示してくれるコンパスのような存在です。方角は教えてくれますが、どの道を進むかを決めるのは、デザインを届ける私たち自身です。
まとめ
AIがデザインの評価を苦手とする主な理由は、次の5つです。
- 使われる現場や目的を知らない
- 人間のように「感じる」ことができない
- 肯定的な評価に寄りやすい
- 評価が安定しない
- 細部の見え方が人間と異なる
こうした特性を理解したうえで使えば、AIはデザインの質を引き上げる心強い味方になります。まずは手元のデザインを1枚見せて、前提をしっかり伝えたうえで、「気になる点を3つ教えて」と聞いてみてください。













