先日、自宅で何気なくテレビのバラエティ番組(探偵番組)を見ていたときのことです。ある家庭の父親からの依頼に思わず背筋が伸びました。その内容は「娘が俳句や作文の課題などでAIばかりを使っていて、自分で考えなくなっているのではないか。このままでは将来が不安だから何とかしてほしい」というものでした。
番組自体は笑いありの展開でしたが、この父親の「便利になることへの恐怖」や「プロセスの欠如への懸念」は、私たちビジネスの現場にいる人間にとっても、決して他人事ではありません。皆さんも、社内で似たような不安を感じたことはないでしょうか? 「若手がリサーチを全部AIに任せている」「企画書がどこかで見たようなAIっぽい言葉ばかり並んでいる」などなど。
実は家庭の悩みが、実は現代企業のDXが抱える「思考停止」という根深い課題とリンクしているという事実を書いてみようと思います。
【本質的な原因】AIは「答え」をくれるが、「意志」はくれない
番組の話、なぜ、父親は不安を感じたのでしょうか。
その原因はおそらく、AIを思考のパートナーではなく、思考の代行業者みたいな役割として扱ってしまっている娘さんを想う点にあります。
ちなみにWebサイト制作やマーケティングは同様です。 「AIにキャッチコピーを書かせればいい」「AIにデザイン案を出させればいい」。 これらは一見、業務効率化に見えます。しかし、そこには誰に何をなぜ届けるのかという、企業としての意志や戦略が欠落しているので、そのままでは思考停止に陥る可能性はあります。
AIは膨大な過去のデータから、それらしい正解を導き出す天才ではあるのですが、情熱とか、顧客だけが知る現場の空気感までは理解していません。プロセスをすっ飛ばして結果だけをAIに求めると、ビジネスはコモディティ化してしまい、誰の心にも響かないものになってしまうのです。

AIを使いこなす側に回るために
「だからAIは使うな!」と言いたいわけではありません。むしろ逆です。これからの時代、AIを使わない手はありませんし、もっと普通に、AIは生活に溶け込んでいくと思います。大切なのは、主従関係(ちょっとカタイ表現ですけど)をはっきりさせることです。
- 「問い」を立てる力の強化: AIから良い回答を引き出すためには、人間が良いプロンプトを出す必要があります。これには、自社の課題を言語化する高い論理的思考力が求められます。ツールを導入するだけでなく、担当者様がディレクターとして動けるようにならないといけません。
- 「人間がやるべき領域」の再定義: データ分析や定型文の作成はAIに任せる。一方で、顧客の感情に寄り添う「共感」の部分や、最終的な責任は人間が担うこと。
- 独自性の創出: AIが出したアウトプットに、独自のストーリーや強みをどう掛け合わせるか。ここが“主”である私たちの腕の見せどころです。AIを活用しつつも、決して無機質にならない、温かみのあるアウトプットが大切だと思います。
番組で「娘さん」がAIを使って作った俳句に、自身の体験や感情をどう乗せるか悩むように、企業もまた、テクノロジーに「自社の魂」を吹き込む作業が必要なのです。
AIへの依存が不安なのは、戦略がないからに他なりません。 AIに使われる組織ではなく、AIを右腕として使いこなし、成果を出す組織へ変わっていけると良いですよね。
アイ・セプトでは、御社の現状に合わせたWeb戦略・DX支援の無料相談を行っています。お悩みの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
蛇足ですが、この先、家に持ち帰る宿題は減るような気がします。なぜなら、家でAIを使ってしまう可能性があるからです。そこで、頭だけを使わせるために、学校で宿題をしてもらおうというわけです。さて、どうなることやら。














