生成AIは、企業や自治体の業務改善に役立つ一方で、ルールづくりと確認体制が欠かせません

デジタル庁は、2026年6月12日に「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(第2.0版)」を決定しました。これは、行政機関が生成AIを導入・活用する際の考え方を整理したものです。デジタル庁によると、今回の改定は、生成AI関連技術の進展、利用場面の拡大、国内外の制度や政策の動きを踏まえたものです。

企業や自治体にとって重要なのは、生成AIを「使うか、使わないか」だけで考えるのではなく、「どの業務に使うか」「誰が確認するか」「どの情報を入れてよいか」を決めておくことです。

なぜ今、行政の生成AIガイドラインが注目されるのですか?

理由は、生成AIの利用場面が広がっているからです。デジタル庁は、2025年5月27日に策定した生成AIの調達・利活用に関するガイドラインについて、技術の進展やユースケースの拡大などを踏まえて、2026年6月12日に第2.0版へ改定したと説明しています。

これは、行政においても生成AIが一時的な流行ではなく、業務の中で使われる段階に入っていることを示す動きです。行政の仕事には、住民対応、文書作成、会議資料、制度説明、申請手続き、地域課題への対応など、多くの情報整理が含まれます。こうした業務では、生成AIによって作業時間を短縮できる可能性があります。

ただし、行政情報には個人情報や機密性の高い情報も含まれます。そのため、便利さだけでなく、安全な使い方を決めることが欠かせません。

自治体では、どのようなAI活用が進んでいますか?

デジタル庁ニュースでは、自治体のAI活用事例として、岐阜県下呂市の取り組みが紹介されています。下呂市では、2024年度からAI機能が備わったGoogle Workspaceを業務に用いており、会議の事前意見の収集、自動文字起こし、会議まとめ、議事録作成などに活用しているとされています。

同記事では、下呂市の例として、会議資料作成から議事録共有まで約9時間かかっていた作業を、約50分に短縮できたことも紹介されています。

また、下呂市では「ごみの分け方・出し方ガイド」の事例も紹介されています。ごみの品名を入力すると、出す時の注意点などが表示される仕組みで、市民の利便性向上と職員の負担軽減を目的としたものです。

このような事例は、AI活用が「特別な技術部門だけの話」ではなく、日々の行政事務や住民サービスにも関係していることを示しています。

企業にも関係がありますか?

これは、関係があります。経済産業省は、AI事業者ガイドライン検討会において「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を取りまとめています。同ページでは、最新版の本編、概要、チェックリスト、ワークシートなどが公開されています。企業がAIを導入する場合も、自治体と同じように次のような確認が必要です。

  • どの業務にAIを使うのか
  • 入力してはいけない情報は何か
  • AIが作った文章を誰が確認するのか
  • 間違いが起きた時にどう対応するのか
  • 社内ルールを誰が管理するのか

たとえるなら、生成AIは「便利な車」のようなものです。車は移動を速くしてくれますが、交通ルール、運転免許、点検が必要です。生成AIも同じで、便利だからこそ、使い方のルールと確認の仕組みが必要なのです。

生成AI導入で気をつけるべきことは何ですか?

これは、私もよく質問されるのですが、まず大切なのは、「AIに任せる仕事」と「人が判断する仕事」を分けることです。そもそも、生成AIに向いている作業には、次のようなものがあります。

  • 文章のたたき台作成
  • 長い文章の要約
  • 会議メモの整理
  • よくある質問の下書き作成
  • アイデア出し
  • 表現の言い換え
  • アンケート自由記述の分類

一方で、次のような作業は注意が必要です。

  • 契約や法務に関わる最終判断
  • 個人情報を含む内容の処理
  • 住民や顧客への正式回答
  • 医療、福祉、防災など慎重な判断が必要な分野
  • 会社や自治体の方針決定

生成AIは、資料づくりの下書きや整理には役立ちますが、最終的な責任を持つのは人だということを忘れてはいけません。したがって、知らない知識を生成AIに任せた場合、不確実な情報や言い回しに気づけるかどうかは、とても大事なことでもあるので、気を付ける必要があります。

どこから取り組むべきですか?

最初から大きなシステムを作る必要はありません。まずは、日常業務の中で負担が大きい作業を一つ選ぶことが現実的です。たとえば、次のような業務です。

  • 会議メモの要約
  • お知らせ文の下書き作成
  • SNS投稿案の作成
  • よくある問い合わせの整理
  • 社内マニュアルの読みやすい表現への修正

いきなり全社・全庁で広げることではなく、「安全に試せる範囲」を決めることが大切です。下呂市の事例でも、AIを全庁に広げるためには「人材と文化」「推進体制」「評価と横展開」の三つの柱が重要だと紹介されています。これは企業にも当てはまります。担当者だけに任せるのではなく、経営層や管理職が目的を理解し、現場が使いやすい形にすることが大切です。

AIO対策として、企業・自治体サイトで意識したいこと

AIOとは、AI検索やAIによる回答に、自社や自治体の情報が正しく拾われやすくするための考え方です。生成AI時代のWeb活用では、検索順位だけでなく、「AIが読み取りやすい情報設計」も重要になります。具体的には、次のような点が大切です。

  • 結論をページの冒頭に書く
  • 読者の疑問に答える見出しを付ける
  • 専門用語を使いすぎない
  • サービス内容、対象者、料金、相談方法を明確にする
  • 古い情報を放置しない
  • 根拠となる情報源を示す
  • よくある質問を整理する

これは、読者にとってもAIにとっても分かりやすいページを作るということです。たとえば、役所の窓口で「何を相談できますか?」と聞かれたとき、担当者がすぐに答えられる状態にしておくようなものです。Webサイトでも、AIが内容を読み取りやすいように、情報を整理しておくことが大切です。

まとめ

2026年6月12日にデジタル庁が公表した生成AIの調達・利活用に関するガイドライン第2.0版は、行政における生成AI活用がより実務的な段階に入っていることを示しています。企業や自治体にとって、生成AIは業務効率化や情報整理に役立つ道具です。一方で、個人情報、誤情報、確認不足といったリスクもあります。

そのため、これからのAI導入では、次の視点が重要です。

  • まずは小さな業務から試す
  • 入力してよい情報、いけない情報を決める
  • AIが作った内容は人が確認する
  • 成果を見える形で振り返る
  • WebサイトもAIに読み取られやすい形に整える

生成AIは、うまく使えば、企業や自治体の仕事を支える心強い道具になります。大切なのは、「AIに任せきり」にすることではなく、人が目的を決め、AIを上手に使いこなすことです。

企業・自治体のIT活用、Web活用、AI導入、地域課題解決に関するご相談は、アイ・セプトまでお気軽にお問い合わせください。詳しくはWebサイトをご覧ください。

ABOUT US
アバター画像
アイ・セプトの社長
株式会社プロトクリエイティブ(現 株式会社プロトコーポレーション)で、 各種メディアをアートディレクターとしてプロデュース。のちに、お客様の一番近くで仕事をしたいと考え、転職して営業職にジョブチェンジ。
株式会社ウェブ・ワークス(現 トランスコスモス株式会社)では、新事業の草分けとしてプロジェクトマネージャーとなり、のちに東海圏と関西圏のエリアマネージャー、福岡・札幌圏のアドバイザーを担う。そのほか、人事制度の策定や事業再生にも従事。

2009年7月7日『株式会社アイ・セプト』を設立、代表取締役社長に就任。2019年には北海道上川郡下川町にオフィス、2024年には秋田県秋田市に秋田オフィスを開設し、地域課題の解決に向けて精力的に活動中。

GUGA認定 生成AIパスポート 有資格者。
総務省の都道府県における市町村支援のデジタル人材に登録されています。
趣味はマラソン、釣り、ライブ観戦