インフレで外食の値上げが当たり前になった今、「サイゼリヤは値上げしないのに増収増益らしい」と話題です。たしかに、サイゼリヤは看板となる価格を強く守っています。でも、通っている人ほど気づくはずです。ただ、価格を据え置いてるんじゃなくて、財布に負担を感じさせない形で、あちこちを調整しているんだな、と。
直近の開示資料では、サイゼリヤは売上高2,567億円(前年差+14.3%)、営業利益154億円(+4.3%)など増収増益を示しています。そして売上の伸びは、客数の増加と、客単価のじわ上げの両方で説明がつきます。連結の客数は2.995億人(前年差+3,229万人相当)、客単価は857円(前年差+17円)と上向き。では、なぜ“派手な値上げ”をしないのに、こういうことが起きるのか。ポイントは大きく5つあると思います。
1.「値上げしない」は主力価格を動かさないという意味に近い
サイゼリヤが強いのは、価格そのものというより、ここはまだ安く食べられるという認知(体感価格)を守っている点です。そのためにやることは、全品一律値上げではなく、
- お得に見える固定メニューは守る
- その代わり、構成(メニュー・セット・導線)をいじって全体最適する
・・ということだと思います。たとえばランチのセットドリンクバーは、以前のランチ特別価格から通常のセット価格へ改定された、という報道があります。毎回ドリンクバーを付ける人にとっては実質的な負担増。でもランチ500円〜の看板感は崩さない。“行く人の財布”に配慮した値付けの見せ方です。
2.メニューの入れ替えと絞り込みで、原価とオペを軽くする
「あ、メニューから消えてる」「新しいメニューが増えてる」。サイゼリヤはメニュー数の削減・精選(絞り込み)を進めてきたことが報じられており、狙いはシンプルに 原価・物流・調理のブレを減らして、生産性を上げることだと思います。
メニューが多いほど、仕入れが複雑になり、在庫ロスや調理教育コストも増えるはずです。逆に、売れ筋中心に寄せると、仕入れが読みやすかったり、廃棄が減ったりしますし、調理も速くなって回転数が上がり、結果的に客数が伸びるのではないかと思うのです(あくまで想像)。
3.しれっと“増やす”
決算説明資料では、国内の営業利益増減要因の中に「メニューミックス」が出てきます(プラス要因として計上)。これは、同じ客数・同じ客単価でも、何が売れたかで利益が変わるということだと思います。
たとえば、原価が上がりやすいメニューは入れ替えるとか、露出を落とすとか。あとできるだけ、ついで買いをしてもらえるようにメニュー表などで導線を作ったりすることで、注文の組み合わせで、しれっと粗利を取っていく。そんな感じではないかと。そうなると客単価は大きく跳ねなくても、利益は増えるということになります。
4.SPA
低価格を支える核は、上流に踏み込むバリューチェーンです。公式サイトでも、オーストラリアの自社工場(ホワイトソースやミートソース、ハンバーグ等)や、中国・広州の自社工場(ピザやソース等)での加工・供給体制を説明しています。
この強みは、中間マージンを減らしたり、店舗側の仕込み負担を減らしたり、安定した食材供給を実現することにあるのではないかと思います。価格を上げない代わりに、コストの出方そのものを変えるというのは、黎明期のユニクロのSPA転換もそうですが、これができると強いなと思います。
5.店舗あたりの処理能力を上げる
ここでようやく弊社に近しい話になるのですが、サイゼリヤは、スマホ注文やセルフレジなど、店舗オペレーションの標準化・省力化を進めていると年次レポートで述べています。同じ資料の中でも、既存店の客数・客単価が伸びた背景に、店舗組織の改善、メニュー戦略、DXの活用が挙げられています。これからの時代、ITは切っても切り離せない、重要なファクターなのです。
処理能力が向上すれば、回転が上がり、客数が増えます。そしてミスやロスが減ることで利益にも繋がります。そうなると社会問題にも発展している人手不足にも対応できて、機会があっても見逃してしまうことがなくなるわけです。

まとめ
サイゼリヤは「全然値上げしないけど、すごい店」とか「財布に助かる店」とか「ワインやビールが手軽に飲める店」とか、いろいろな見方があるかと思うのですが、よーくみるとかなりの企業努力の結果、今があるという感じですよね。満足度も高いですし。
最近の報道でも、インフレ下での客単価の上がり方を、人の心理(「心の会計」的な見方)から説明する切り口が出ていました。「高くなった」と感じさせない範囲で、ちょい足しを自然に起こす。 これが、客単価+1〜2%の積み上げにつながるということです。
今回、いろいろと調べてみましたが、“すごい”の一言ですね。賃金上昇しても物価高に追いつかない現状において、サイゼリヤは神!という理由は、サイゼリヤが日々努力を重ねた結果なのだということをひしひしと感じます。













