ヒグマ対策について

全国の自治体では、ツキノワグマやヒグマに対するさまざまな対策を立てています。これも人の安全・安心を確保する意味で、とても大切なことです。今回は、北海道上川郡下川町が公開している「令和8年度 ヒグマ対策について」を例に、自治体がどのような対策を進めているのかを見ていきます。

下川町が進める令和8年度のヒグマ対策

下川町では、近年多発するヒグマの出没に対応するため、国や北海道と連携しながら各種対策を進めています。また、町民に対しても、生ごみの適切な処理などへの協力を呼びかけ、地域全体で安全な環境を守る姿勢を示しています。

下川町が紹介している主な取り組みは、次の4つです。

1. アニマルアラートによる目撃情報の提供

下川町では、スマートフォンなどで野生動物の出没情報を確認できる「アニマルアラート」を運用しています。ヒグマの目撃情報を住民が把握しやすくすることで、外出時の注意や行動判断につなげることができます。

クマ対策において、情報の早さと見やすさは非常に重要です。

「どこで目撃されたのか」
「自宅や学校、職場の近くなのか」
「通勤・通学・散歩コースに影響があるのか」

こうした情報を地図などで確認できれば、住民は自分ごととして危険を把握しやすくなります。自治体にとっても、単にお知らせを出すだけでなく、住民に伝わる形で情報を届けることが安全対策の大切な一歩になります。

2. 箱罠の設置

下川町では、北海道開発局の協力のもと、捕獲用の箱罠を設置しています。

市街地や生活圏の近くにヒグマが出没した場合、住民の安全確保のためには、状況に応じた捕獲体制が必要になります。箱罠の設置は、出没状況や危険度を踏まえたうえで、関係機関と連携しながら進める対策の一つです。

ここで大切なのは、捕獲だけに頼るのではなく、情報提供や環境整備と組み合わせて取り組むことです。クマが人の生活圏に近づきにくい環境をつくりながら、万が一の際の対応手段も備えておく。この両面の考え方が、自治体の対策には求められます。

3. 市街地近辺の除草

下川町では、市街地近辺の堤防や高水敷について、見通しを良くするため、北海道開発局の協力により河川敷等の草刈りを実施しています。これは非常に実務的で重要な対策です。

草が伸び、見通しが悪くなると、人がクマの存在に気づきにくくなります。逆にクマにとっても身を隠しやすい環境になります。市街地の近くや通学路、散歩道、河川敷などで見通しを確保することは、遭遇リスクを下げるための基本的な環境整備といえます。

「危険な場所に近づかないよう呼びかける」だけでなく、「危険が起こりにくい環境をつくる」ことも、自治体の重要な役割です。

4. 樹木の伐採による環境整備

下川町では、名寄川沿いの樹木伐採による環境整備も進めています。令和8年2月には下川町旭町地区で樹木伐採を実施し、引き続き北町地区でも令和8年5月頃に実施予定としています。

樹木や草木が生い茂った場所は、野生動物が移動しやすい経路になることがあります。特に河川沿いや市街地に近い緑地は、人の生活圏と野生動物の行動圏が重なりやすい場所です。

そのため、樹木の伐採や草刈りによって見通しを改善することは、単なる景観整備ではなく、住民の安全を守るための防災・防犯に近い意味を持つ取り組みといえます。

自治体のクマ対策は「複合的な取り組み」が重要

下川町の取り組みから分かるのは、ヒグマ対策は一つの方法だけで完結するものではないということです。

目撃情報を早く伝える。
箱罠を設置する。
草刈りで見通しを良くする。
樹木を伐採し、生活圏との境界を整える。
住民に生ごみの適切な処理を呼びかける。

これらを組み合わせることで、地域全体の安全性を高めていくことができます。とりわけ住民への情報提供は今後ますます重要になります。クマの出没情報は、ただ行政内部で把握するだけでは十分ではありません。住民がすぐに確認でき、日々の行動に活かせる形で届けることが必要です。

住民の協力も欠かせない

自治体が対策を進める一方で、住民一人ひとりの協力も欠かせません。下川町も、生ごみの適切な処理などへの協力を呼びかけています。

クマは食べ物に引き寄せられることがあります。家庭や事業所から出る生ごみ、収穫後の農作物、放置された果実などが誘因になれば、クマが人の生活圏に近づくきっかけになってしまいます。自治体の対策と住民の行動がそろってはじめて、地域の安全・安心は守りやすくなるのです。

ちなみに、私が下川町に滞在するのは年間50日~60日くらいなのですが、朝7時前と夕方17時以降は、好きなランニングは控えています。朝方や暗闇は危険が潜んでいる可能性が高いからです。また、暖かい季節の雨ランも控えています(クマの警戒心が薄れているからです)。デントコーンや茂みの多い場所の近くでも「もしかして(潜んでいる)」があるので、できるだけ走らないようにしています。

クマ対策は、地域の安全を守るまちづくり

ヒグマやツキノワグマへの対策は、単なる鳥獣対策ではありません。住民の暮らし、通学、通勤、農林業、観光など、地域全体の安心に関わる重要な取り組みです。

北海道上川郡下川町の令和8年度ヒグマ対策では、アニマルアラートによる情報提供、箱罠の設置、除草、樹木伐採など、複数の対策が進められています。こうした取り組みは、他の自治体にとっても参考になります。

これからのクマ対策では、行政だけが対応するのではなく、国・都道府県・市町村・地域住民が連携しながら、危険を早く知り、近づけにくい環境をつくり、安心して暮らせる地域を守っていくことが大切です。

ABOUT US
アバター画像
アイ・セプトの社長
株式会社プロトクリエイティブ(現 株式会社プロトコーポレーション)で、 各種メディアをアートディレクターとしてプロデュース。のちに、お客様の一番近くで仕事をしたいと考え、転職して営業職にジョブチェンジ。
株式会社ウェブ・ワークス(現 トランスコスモス株式会社)では、新事業の草分けとしてプロジェクトマネージャーとなり、のちに東海圏と関西圏のエリアマネージャー、福岡・札幌圏のアドバイザーを担う。そのほか、人事制度の策定や事業再生にも従事。

2009年7月7日『株式会社アイ・セプト』を設立、代表取締役社長に就任。2019年には北海道上川郡下川町にオフィス、2024年には秋田県秋田市に秋田オフィスを開設し、地域課題の解決に向けて精力的に活動中。
GUGA認定 生成AIパスポート 有資格者。
総務省の都道府県における市町村支援のデジタル人材に登録されています。
趣味はマラソン、釣り、ライブ観戦