派手さより成果!一般企業のWEB設計

動画や大きなアニメーションは目を引きますが、目的が“見ること”でなく“動いてもらうこと”なら、優先すべきはつながり・読みやすさ・速さです。今月の標準化の動きは、その判断を後押しします。

“つながり”“読みやすさ”“速さ”

  • View Transition API:ページや要素の切替に、滑らかな移行(クロスフェード等)を標準で付けられる仕組みがあります。
  • WCAG 2.2 の ISO化:各国・各業界で参照が進む見込みです。読みやすさ(コントラスト、フォーカスの見やすさ等)や、キーボード操作への配慮など、迷わず使えるための基準が整理されています。
  • INP(Interaction to Next Paint):操作から画面が反応するまでの時間のことをINPと呼びます。2024年3月から、検索評価の中で重視される指標になりました。これがユーザーの体感に直結する重要な指標になります。
  • 色設計のアップデート(OKLCH):人間の視覚に基づいて設計された、色を直感的に扱える知覚的色空間をOKLCHと呼びます。L(明るさ)、C(彩度)、H(色相)の3つの要素で色を表現し、明るさや彩度を保ったまま微調整しやすく、読みやすさとブランドの両立に向きます。ウェブブラウザのCSS仕様にも追加されています。

標準APIで“つながり”を作り、国際基準で“読みやすさ”を担保し、指標で“速さ”を測る」時代に入りました。

受け入れられることが大事

1) 離脱を減らす“最初の1秒の信頼”
ユーザーはページの切れ目や待ち時間で迷うことがあります。遷移が滑らかで、テキストが読みやすく、操作がすぐ返る――この3点が揃うと、フォーム完了率や採用エントリー率が素直に上がると言われています。したがってアニメーションを使う場合は、目新しさよりも迷わせない道しるべとして使うのがコツです。

2) 重い演出は広告費を溶かす(?)
高解像度動画の自動再生、凝ったスクロールの演出は、初めての表示を重くしがちです。広告やSNSで、いくら流入を頑張っても、表示が遅いだけで離脱が増えてしまい、投資対効果が目減りしてしまいます。例えばキャンペーンページなどは、かなり凝ったデザインと動きで目新しさを重視してしまう傾向があるのですが、逆効果の場合もあるということです。そこで、できるだけ軽量で読みやすいページを作ることを心掛け、必要だと思う箇所だけに効果的な動きを加えるほうが、ページ全体にメリハリがつきますし、費用対効果は高くなることが期待できます。

具体的にはどうしたら良い?(例)

A. まず速く、次に滑らか

  • 画像は必要最小限のサイズに(ヒーロー動画の自動再生は原則オフ、サムネイル+任意再生)。
  • INP と LCP を計測(Search Console や PageSpeed Insights)。悪いページから順に直す。
  • View Transition API は“重要導線”から段階導入(例:製品一覧→詳細、求人一覧→応募)。

B. 読みやすさの標準装備

  • 見出しは短く、本文は60〜80文字/行を目安に。
  • コントラストは WCAG AA を目安(OKLCH で微調整すると実務が楽)。
  • フォーカスリング(キーボード操作時の枠)を見えるように。消さない。

C. 動きは“道案内”に限定

  • クリック→次画面の要素が対応して現れるように。派手なパララックスより、迷わない移行を優先。
  • 初回は静止画+少量のモーション、二回目以降にだけ動画を出すなど、段階的に。

D. 体制とコストの現実解

  • 既存CMSを活かし、テンプレート側に基準(速度・読みやすさ・遷移)を内蔵。運用担当はコンテンツ(中身)に集中。

派手さは悪ではありません。ですが順番はあります。速く・読みやすく・つながる——この土台の上で、必要な場所にだけ動きを足す。これが最短で成果に届く設計だと思います。最初の1秒の信頼がCVRを押し上げることにもなりますし、動画の見栄えを少し削ってでも、読みやすさと速さ、そして迷わない遷移を先に整えた方が、問い合わせは増え、見込顧客との歩留まりも良くなることが期待できます。派手さは一部に絞りましょう。

蛇足かもしれませんが、なぜXが今でもメジャーなSNSとして君臨しているのかと言えば、理由はテキストSNSだからです。基本はテキスト、メリハリとして写真や動画だと考えたら良いでしょう。表示が速いし、読みやすい、そのシンプルさがユーザーとの距離を縮めるのです。

ABOUT US
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アイ・セプトの社長
株式会社プロトクリエイティブ(現 株式会社プロトコーポレーション)で、雑誌やWebサイト、広告などをアートディレクターとしてプロデュース。のちに、お客様の一番近くで仕事をしたいと考え、営業職にジョブチェンジ。
転職先の株式会社ウェブ・ワークス(現 トランス・コスモス株式会社)では、新事業の草分けとしてプロジェクトマネージャーとなり、のちに東海圏と関西圏にある複数拠点をマネジメントするエリアマネージャーと、福岡・札幌圏のアドバイザーを担う。そのほか、人事制度の策定や事業再生にも従事。

2009年7月7日『株式会社アイ・セプト』を設立、代表取締役社長に就任。2019年には北海道上川郡下川町にオフィス、2024年には秋田県秋田市に秋田オフィスを開設し、地域課題の解決に向けて精力的に活動中。